S / F

2 0 1 7 年 1 2 月 0 4 日

ひと目に、綺麗な人だと思った。会議室の扉が開いて、ひょこっと顔を出したのが彼女だった。素朴に、だけど品のある、紅茶のシフォンケーキのような顔立ちをしていた。優しい味があった。それが2年前のことだ。


それから2ヶ月ほど同じプロジェクトに関わって、そのプロジェクトが解散した時に、僕から声をかけた。季節は春も桜が見頃な時季であったが、あまりの忙しさに春らしいことをお互い何もできていなかったので、何か春らしいことをしませんか、というようなことを言ったのだったと思う。


新宿御苑で桜を見ながらお弁当を食べて、都内を散策して、夜には上野でまた桜を見た。


「僕たち付き合えるんじゃないですか?」


と聞いたら、


「どう思いますか?」


と笑って返された。


あっという間の2年だった。身に起こったことは、なんでも書き起こしてみたくなるけれど、彼女とのことはあまり書けていないなと思う。


いつかフィクションにしたら書けるかもしれない、ひょっとしたら世の中のフィクションは全部、こんな風にしてできているのかもしれないなと思った。


いつの間にか一緒に暮らしていて、そしていつの間にか結婚することになった。打算的な自分が、こんな風に人生の歩を進めていくことになるなんて、思ってもみなかった。


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