砂の城、急須

2 0 1 8 年 0 2 月 0 5 日

久しぶりに、カレーでも作るか、と思った。仕事帰りはいつもそんなことを考えている。しかしそんな元気はなかった。きっと人生に余裕がなくなっていたのかもしれない。


自炊が続かなくなった時は、取り敢えずにでもお茶を一杯沸かすのだ。ガスコンロのつまみを回すということに変な苦手意識を持ってはいけないし、食洗用のスポンジに洗剤をつけることを億劫に思ってもいけない。


社会人になるタイミングで借りた両国の部屋を引き払って、目黒に越してきた。引っ越しはいつも慌ただしくてエネルギーを使う。毎日を送る環境を変えるということに、それほど慣れていないのはある。いっそ遊牧民になれたら、なんてことない日常のことなのかもしれないが、今のところはそうなる予定もないし、なんなら次はしばらくは長く、ここに住み続けたいと思っていた。


仕事は続けているし、どちらかといえばとても楽しい。むしろ、今この仕事がなくなってしまったら、僕はひどく困る。という程に毎日の仕事が楽しい今の状況の方が結局自分を苦しめているに違いなかった。


都心に住んで、これからどうしよう。ここで子供を、育てられるのだろうか。取り巻く環境と、そこに纏わる情報から、何を見出していけるだろう。


急須で淹れた焙じ茶が美味しい。

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