社会人1日目の朝

2 0 1 7 年 0 4 月 0 3 日

社会人1日目の朝は5時半からアラームをセットしていたのだけど、5時16分に目が覚めて、このまま起きてしまおうかどうしようかと少し目を伏せたり、スマホの画面を眺めてみたりして悩んでみたところで、結局そのまま起きた。5時23分だった。


紅葉はまだ寝ていたので、起こしたら悪いと思ってこっそりキッチンまで行く。その距離2メートル。昨日作り置いたカレーに火を入れて、そこから更に1メートル離れた洗面所で寝癖を直す。寝癖を直すなんて、いつぶりだろう。寝間着のTシャツを脱いで、黒のヒートテックを着て、白いワイシャツに袖を通して、ズボンを履いて靴下を履いた。


テレビのリモコンを手に取り、電源ボタンを押すのと同時に消音ボタンも押す。紅葉を起こしたら申し訳ないと思ったのだ。朝はやく起きてNHKを見るのは父の習慣だった。とはいえ別に我が家の父に限った話でもないだろう。


カレーがぽこぽこ音を立て始めたので、火を止めて、冷蔵庫の上に置いてある炊飯器を降ろしていたら、紅葉が起きて


「何ガタガタやってんの。音響いてんだけど。」


と布団の中からキレられる。


 

普段は温厚な僕だけど、昨晩セックスを断られたことに未だ腹が立っている僕は「カレー温めたけどくれはも食べる?」とは聞いてやらない。「ああそうすまん。」とだけ答えて冷蔵庫からこれまた昨日の残りのサラダを取り出す。


 

半目開けた紅葉が僕を見て、「あのね、2人で朝カレーしたかったんだけど、まかないが白いワイシャツ着ちゃったからできない。」などとのたまう。いや僕はこれでおかまいなくカレーを食べるつもりだ。つもりであった。


 

でも僕は社会人なので、きちんとリスクを精査した上で行動をすることができる。素直に人の忠告を聞くこともできる。ワイシャツを脱ぐ。ハンガーにかけてドアフックに吊るす。


 

ふと目をやるとキッチンの曇りガラスの向こうにボヤけてるけどはっきりと朝日のピンクの輪郭が見えて、社会人1日目の朝日を拝めるとは幸先がいい。なんて思ったら、紅葉にもカレーを食べさせてやらんこともないな。と思い、「カレー温めたけどくれはも食べる?」と聞いてやる。


 

最初「うーん…」とか言うけど結局「…食べる。」のだそうだ。可愛い。きっと初日の朝食は自分で用意したかったんだろうなあなどと思うと可愛い。


 

「定時出社は何時なの?」と聞かれて、「8時40分だね」と答える。


「早いね。」と言われて、「静岡大学の1限の開始と同じだよ。」と答える。


自分で話しながら、なんか台詞みたいだなと思ったので、せっかくだから日記を書くことにした。テレビでは今日から入社式がうんぬん、新社会人が云々と言っている。6時25分。

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